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【DL資料付き】2021年度版 年末調整の基礎知識を徹底解説

年末調整の時期になりました。毎年のことですが大変です。

税金のことは人事ではよくわからないんですよね。

税金といっても社員の所得税は毎月の給与や賞与、社会保険料などが関わってきますから人事部門の仕事となっている会社が多いのではないでしょうか。
この記事では人事担当者が知っておくべき年末調整の基礎知識をご説明しましょう。

年末調整とは

年末調整はその年の1月1日から12月31日までに支払った給与にかかる所得税を調整するために行います。

毎月の給与や賞与の明細書をみると所得税を控除しているのがわかります。控除された所得税は会社が税務署に納付しています。これを源泉徴収といい、会社は従業員に対して支払った給与などにかかる所得税を徴収して納付する義務を負っているのです。

毎月の所得税はその年に初めて給与が支払われるまでに会社に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で申告している扶養情報にもとづいて計算されます。

引用:国税庁|給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

年の途中に扶養家族の増減があっても、それ以前の月に遡って所得税の修正を行うわけにはいきません。また生命保険料や地震保険料等は毎月の所得税額には全く考慮されていません。

したがって、毎月控除されている所得税はあくまでも「概算」で計算されているに過ぎず、年末の正しい状況にて清算を行う必要があります。

この清算の作業を年末調整と言います。

毎月の給与から控除されていた所得税合計が清算した年税額より多かった場合には還付となり、少なかった場合には徴収となります。

この所得税を清算した、年末調整を行った結果が「源泉徴収票」に記載されます。

給与所得の源泉徴収票

引用:国税庁|給与所得の源泉徴収票

年末調整の対象者は?

年末調整の対象について確認しましょう。

1)パートやアルバイトの年末調整はどうする?

パートやアルバイトも年末調整の対象です。12月31日に会社に雇用されている者が対象となるためです。大半の会社は退職者でも12月給与を支払う者までは自社の年末調整の対象としているのではないでしょうか。

パートなどで月額給与が88,000円未満の場合は所得税の課税対象外ですので毎月の給与から所得税は控除されていません。国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」で確認するとわかりやすいですね。

給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

引用:国税庁|給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

パートなど所得税の課税対象外の人についても年末調整はします。源泉徴収票は給与や社会保険料を記入し、源泉徴収票の所得税は「0」として発行します。

2)育児休業や介護休業中の社員の年末調整は?

育児休業や介護休業中の社員は会社に在籍していますので年末調整の対象です。休業前に支払った、その年の給与や賞与の支払い実績で年末調整を行います。雇用保険や健康保険から受け取る手当や給付金などは所得税の課税対象外ですので覚えておきましょう。

年末調整で回収する書類の意味(各種控除)

年末調整で回収する書類について確認しておきましょう。年末調整する人は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに必要な書類を会社に提出しなければなりません。

会社が回収する書類は次の(1)~(4)です。

(1) 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

(2)  給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除等申告書

(3) 給与所得者の保険料控除申告書

(4) 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

(1)について、従業員は、その最初の給与の支払い時までに提出しなければならず、本年度分について通常は回収済みとなっているかと思います。扶養状況や住所等変更があった場合には、年末調整時点での状況確認が必要となりますので、一度返却し、正しい状況に訂正をしてもらって下さい。

なお、この「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がない場合には、各月の所得税額を算出する税額表の甲欄を適用することができず、税額が多くなる乙欄を適用しなければなりません。

また翌年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」については、翌年の最初の給与支払い時にまでに回収しなければならないのですが、手間を省くために年末調整の書類と同時に回収しても問題ないとされており、実際に多くの会社でそのような対応を取られているかと思います。

(2)については令和2年以後分から「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」が兼用様式となりました。

<給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除等申告書>

引用:国税庁|令和3年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書 記載例

○令和3年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書はこちらからダウンロードできます。

(3)保険料控除申告書と(4)の住宅借入金等特別控除申告書は控除を受けようとする人のみ申告制で提出します。

(3)保険料控除申告書はその年に生命保険料・地震保険料等・社会保険料(給与引きされている保険料以外の支払いがある場合のみ。給与引き分は会社が把握しているので不要です)・小規模企業共済等掛金を支払った人が申告するもので、申告すれば一定のルールにもとづいた金額が所得控除されます。

ただし、添付書類も必要ですので注意しましょう。

【必要な添付書類】

生命保険料:生命保険会社等が発行した証明書類。旧生命保険は9,000円以下の証明書は不要です。

地震保険料等:損害保険会社等が発行した証明書類。保険料額に関係なくすべてのものに証明書が必要です。

社会保険料:国民健康保険料や介護保険の保険料、国民年金保険料などが該当します。国民年金保険料と国民年金基金の掛金は厚労省や国民年金基金が発行した証明書が必要です。

小規模企業共済等掛金:小規模企業共済や確定拠出年金の個人型掛金が該当します。金額に関係なくすべてのものに基金連合会や地方公共団体などが発行した証明書が必要です。

(4)の住宅借入金等特別控除申告書は簡単にいうと住宅ローンを組んでいる人で住宅借入金等特別控除申告書を持っている人が対象です。

【必要な添付書類】

その年の住宅借入金等特別控除申告書

その年の借入金の残高証明書

住宅購入の初年度は会社の年末調整では対応できません。社員が自分で確定申告しなければなりません。その時に翌年以降の対象年度分の申告書を税務署から渡されますので翌年から会社で年末調整できます。

2021年の年末調整の変更点

本年は昨年ほど大きな変更点はありますが、以下4点が変更となっています。

  • 税務関係書類における押印義務の改正

税務署長等に提出する源泉所得税関係書類について、押印を要しないこととされました。 このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使用する書類についても、従業員等に押印してもらう必要はありません。

  • 源泉徴収関係書類の電磁的提供に係る改正

これまでは、以下の年末調整申告書を従業員から電子データで回収する場合、事前に税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要がありましたが、本年よりき税務署長の承認が不要とされました。

⑴ 給与所得者の扶養控除等申告書

⑵ 従たる給与についての扶養控除等申告書

⑶ 給与所得者の配偶者控除等申告書

⑷ 給与所得者の基礎控除申告書

⑸ 給与所得者の保険料控除申告書

⑹ 給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書

⑺ 所得金額調整控除申告書

⑻ 退職所得の受給に関する申告書

⑼ 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

なお、上記の電磁的方法による提供を行う場合には、給与等の支払者が ① 電磁的方法による提供を適正に受けることができる措置を講じていること ② 提供を受けた記載事項について、その提供をした給与等の支払を受ける者を特定するための必要な措 置を講じていること ③ 提供を受けた記載事項について、電子計算機の映像面への表示及び書面への出力をするための必要な 措置を講じていること の全てを満たす必要があります。

  • 住宅ローン控除の特例の見直し

特別特例取得に該当する住宅を取得した場合の住宅ローン控除の特例(控除期間13年)について、床面積の要件や所得要件等を見直したうえで、2年間延長するというものです。

新型コロナウイルスの影響で、新築や増築の契約をしても工事に遅れが生じるなどで、契約年内に住むことができない人を救済するための処置です。令和3年1月1日~令和4年12月31日までに、以下の期間で取得した住宅に住んでいる場合は、控除期間13年の住宅ローン控除が受けられるというものです。

特別特例取得
住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等(消費税額及び地方消費税額の合計額をいいます。以下同じです。)が、10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます。宅ローン控除の特例は、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅でも適用できます。ただし、合計所得金額が1,000万円を超える年度は適用できません。

※住宅ローン控除は、控除を受ける初年度は確定申告での適用となりますが、2年目以降は年末調整での控除となります。

(4)退職所得課税の見直し

従業員が退職金を受けた場合は、退職所得に対して所得税がかかります。今までは、次の計算式で所得金額を計算していました。

退職所得金額=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2

しかし今回の改正で、勤続年数が5年以下の従業員については(退職金の金額-退職所得控除額)で計算した金額が300万円を超える場合、超えた部分については「×1/2」がなくなります。

現在、勤続年数20年未満の場合、退職所得控除額は40万円 ×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)となっています。この改正は、高額な退職金に対して、税負担の平準化を図るために設けられた措置です。

勤続年数が5年以下の従業員については(退職金の金額-退職所得控除額)で計算した金額が300万円を超えるケースは、あまりないかもしれません。例えば、勤続年数5年で退職金が500万円超の場合に、この改正のルールが当てはまります。

2020年の年末調整からの変更点

昨年のトピックとなりますが、2020年の年末調整から法の改正による変更点がいくつかありました。念のため確認しておきましょう。

(1) 給与所得控除に関する改正

給与所得控除額が次の表のとおり改正されました。控除額が減額されていますので注意しましょう。

給与所得控除額

(2) 基礎控除及び所得金額調整控除に関する改正

基礎控除と所得金額調整控除についても改正されました。

基礎控除の改正

基礎控除額が改正され、合計所得金額が2,500万円を超える所得者については、基礎控除の適用を受けることはできません。

基礎控除額

子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の創設

給与の収入金額が850万円を超えた場合は、特別障害者に該当する人や年齢23歳未満の扶養親族を有する人、特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族を有する人の総所得金額を計算する場合、給与の収入金額から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得の金額から控除することになりました。(給与の収入金額が1,000万円を超える場合には1,000万円として計算します)

「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設

法改正された①②により、年末調整において基礎控除又は子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受けようとする者は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに「給与所得者の基礎控除申告書」または「所得金額調整控除申告書」を会社に提出することになりました。ご紹介した兼用様式であれば、1枚提出すればよいです。

(3) 各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正

 同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額要件がそれぞれ10万円引き上げられました。

合計所得金額要件

配偶者特別控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分も10万円引き上げられています。

配偶者特別控除額一覧

引用元:国税庁|配偶者特別控除額一覧

(4) ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正

ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除についても大きく改正されています。

未婚のひとり親に対する税制上の措置

未婚のひとり親(所得者がひとり親要件を満たすものをいいます。以下同じです。)である場合には、ひとり親控除としてその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から35万円を控除できることになりました。

【ひとり親要件】

・生計を一にする総所得合計額が48万円以下の子を有すること

・合計所得金額が500万円以下であること

・事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと

寡婦(寡夫)控除の見直し

寡婦の要件について見直が行われ、寡婦(寡夫)控除がひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改正されました。同時に「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除の特例が廃止されています。

この見直しは少々複雑なため適用判定フローを国税庁が示していますので、参考にしていただくとよいと思います。

改正前後の控除に係る適用判定のフロー図

参考:国税庁|令和2年分年末調整のしかた 昨年と比べて変わった点

年末調整すれば確定申告は不要?

会社に勤める給与所得だけの人は年末調整すれば確定申告が不要です。そのほかに事業所得や山林所得、雑所得がある人は確定申告しなければなりません。

社員が副業している場合も本人が確定申告します。会社は源泉徴収票を発行するのみです。まれなケースですが、社員の主たる勤務先が他社であったり、配偶者が自営業者であり青色専従者として届出していたりする場合は確定申告してもらいます。

また、その場合は所得税の計算において区分がかわりますので注意しましょう。めずらしいケースで人事担当者も慣れていないと思いますので、専門家に相談する方がよいですよ。

2020年度の年末調整は法改正により昨年までと変わる部分が多くあります。年末調整は作業量も多く、細かな確認作業もあり、人事担当者にとって負担だと思いますが間違いのないように対応したいものです。
扶養などが正しく申告されていないと、翌年秋頃に所轄の税務署から所得税の是正の書類が届き対応することになります。
是正する際は正しい所得税を再計算して社員から徴収して会社が納付します。この対応も会社の義務となっていますので注意しましょう。

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記事監修

classwork編集部

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