正確に理解できていますか?実際の運用例からみる 休日と休暇の違い
休日と休暇、よく似た言葉で従業員から見れば労働しなくてよい日となりますが、法的には意味が異なります。
休日とは?
休日とは、労働義務のない日を指します。 例えば、会社自体がお休みしている日、シフト等で会社がお休みと指定する日等がこれにあたります 。
現在、週休2日制を採用されている会社が多いかと思いますが、この2日の休日について労働法上は実は呼び方が異なります。
労働基準法において、労働時間は原則として1週40時間以内で1日8時間以内とし、休日については1週に1日与えることとしています。(労働基準法第32条、33条)
この原則に基づいて、会社は休日を定めることとなります。
例えば1日8時間労働であれば、1週40時間に収めようとすると、勤務日は5日となり、結果1週に2日の休日が必要となります。
この2日の休日のうち、労働基準法に必ず休ませるよう定められている1週1日(変形休日の場合は1か月4日)以上のお休みのことを「法定休日」と言い、その他の休日を「所定休日」と言います。
なぜこのように呼び方が違うかというと、休日に労働させた場合に支払わなければならない賃金の額が法定か所定によって異なるからです。
「法定休日」に労働させた場合には、労働基準法において、3割5分以上の割増賃金の支払いが必要となります。
一方、「所定休日」に労働させた場合は、結果その週の労働時間が40時間を超えてしまった場合には時間外労働として2割5分以上の割増賃金の支払いが必要となります。
休暇とは?
休暇とは、労働の義務はあるけれど、その義務が免除された日となります。
休暇は夏季休暇や特別休暇等、企業によりさまざま定められているかとは思いますが、労働基準法では年次有給休暇の付与が義務化されております。
平成31年4月より、この年次有給休暇について、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日間については、確実に取得することが義務化されました。年次有給休暇は労働の請求により取得することが原則となりますが、この取得義務化により、年5日間取得できそうにない従業員に対して、会社側がこの5日間については、時期を指定して取得させることもできるようになりました。ただし、そもそも休日となっている日や特別休暇として定めている日を充てることはできません。(特別休暇を5日取得したからと言って、年次有給休暇を5日取得したことにはなりません)
この年次有給休暇5日取得義務化に対応するために、いろんな対策をお考えかと思います。そもそも休日と規定していた例えば年末年始の休日を労働日と規定し直して、そこに年次有給休暇を充てよるのはどうでしょうか?
このような対応は労働条件の変更となり、従業員にとって様々な不利益が生じる恐れがあります。
例えば賃金について、通常月給制の場合、月の所定労働時間労働することを前提に賃金額が定められています。月の所定労働時間も月によりまちまちとなることから、年間平均で定められていることが多いかと思います。
休日が少なくなれば、必然的に所定労働時間は多くなります。そうなると1時間当たりの単価は下がることとなり、時間外や休日労働の際、支払われる割増賃金の単価も下がってしまうこととなってしまいます。
もし上記のような対応を取られる場合には、必ず従業員の合意が必要となります。
休日に有給休暇を取得できるか?
休日は労働義務のない日、休暇は労働義務が免除される日と規定されていることより、そもそも義務のないところに免除は発生しません。つまり休日には有給休暇は取得できないこととなります 。
実際の運用例
就業規則をどのように作れば良いのか、実際の例を見てみましょう。
例1:土日祝日を休日とする(夏季 / 年末年始は休暇とする)
(休日)
第●条 会社の休日は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)土曜日・日曜日
(2)国民の祝日
(3)その他会社が定めた日
2 社員の法定休日は週1日とする。
3 会社は、休日を変更することがある。
(特別休暇)
第●条 規則第2条第1項に定める正社員、限定正社員及び契約社員が次の各号に掲げる事由に該当し、申し出があったときは、次の各号に定める日数の特別休暇を与える。
(1)夏季休暇 3日
勤続3ヶ月以上の者を対象に6月1日から11月30日の間で社員の希望に基づき、会社が付与日を決定する。ただし、翌年度への繰越は認めない。
(2)年末年始休暇 会社が定めた日数
(3)本人が結婚するとき 5日
入社日以降に事由が生じた場合にのみ、入籍日又は挙式日の早い日から起算して
1年以内に取得できるものとする。なお、取得は1回に限る。
(4)子が結婚するとき 3日
(5)配偶者が出産するとき 3日
(6)父母、配偶者、子が死亡した場合 5日
(7)兄弟姉妹が死亡した場合 1日
(8)配偶者の父母が死亡した場合 1日
(9)その他前各号に準じ会社が必要と認めたとき 会社が認めた日数
(10)上記以外の他、会社が必要と認めたとき 会社が認めた日数
2 前項の特別休暇は休日を含まない。
3 第1項の特別休暇を取得した日の賃金については、次の各号に定める。
(1)第1号、第2号 所定労働時間労働した場合の賃金を支払う
(2)第3号から第9号 無給とする
(3)第10号 休暇取得の事由に応じて会社が定める
その他にも、
例2:土日祝日+年末年始(12月30日、12月31日、1月2日、1月3日)を休日とする
例3:土日祝日+年末年始+夏季を休日とする
というパターンもあります。
記事監修
【監修者】特定社会保険労務士 浅井 富美代
スポット社労士くん社会保険労務士法人社員社労士。大学卒業後、流通業においてマネージメント業の従事を経て、開業登録。首都圏を中心として、就業規則や労務問題のコンサルティング活動を展開中。給与計算などの間接部門のアウトソーシング事業にも積極的に取り組む。