みずほFGが週休3〜4日制を導入 週休3日制度について考えよう
みずほフィナンシャルグループ(FG)が2020年12月より、希望する社員に週休3日や週休4日で働くことを認める制度を導入する方針を明らかにしました。週休3日制は一部企業で導入の動きが進んでいるものの、「全社員を対象とした週休4日制」は珍しいと言えるでしょう。週休最大4日制は、メガバンクにおいては初めての試みでもあります。
制度の対象は、みずほフィナンシャルグループと子会社のみずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほ情報総研、みずほ総合研究所といったグループ6社の正社員約4万5,000人(その他のグループ会社でも順次、導入を検討中)。新型コロナ感染拡大を背景に、大学院などで学んだり兼業を考えたりしている人や、介護や子育て中の人などを想定していますが、理由に限定はしないとのこと。
利用にあたっては、土日のほか、毎週決まった曜日を休みにするという方法をとります。給与は、週休3日の場合は従来の8割、週休4日なら6割となります。
金利の低下や金融サービスを提供する新興企業の台頭など、金融機関を取り巻く環境が厳しさを増す中、みずほフィナンシャルグループは、多様な働き方を認めることで社員の意欲を高めるとともに、優秀な人材を確保したいという狙いがあります。
他の企業の状況
みずほフィナンシャルグループの他にも、週休3日の動きはすでに進んでいます。
株式会社ファーストリテイリング
1日の勤務時間は長くなりますが週休3日が可能です。ファーストリテイリングでは、「変形労働制」を利用し、1日10時間×土日を含む週4日の勤務で、通常のフルタイム勤務と同額の給与を支給しています。
株式会社東芝
東芝も、工場など製造現場の従業員に週休3日制を導入する方針であることが2020円5月に明らかになりました。すでに東芝では、在宅勤務を原則にしているが、これは在宅ワークが難しい従業員の出社率を抑える狙いがあります。
ヤフー株式会社
育児・介護・看護のある社員については、週休3日の「えらべる勤務制度」を導入し、選択可能となっています。
日本マイクロソフト株式会社
週休3日のトライアルを実施(2019年夏) 。労働生産性がおよそ40%上がり、社員の92%が支持を表明したとの結果が発表され、話題となりました。
週休3日のメリット・デメリット
では、一般的に、週休3日制度とすることで、どのような変化が生じるでしょうか。
メリット
・柔軟な働き方・多様な働き方ができることで、人生の選択肢が増える
⇒趣味や自分の時間が増えることで、プライベートの充実に繋がります。自己研鑽によって新しい能力や感性を磨くことで、できることの幅が広まり仕事に活かせる可能性もあります。また、プライベートの充実によって、心身共にリフレッシュした状況で仕事に取り組めるため、仕事に対する意欲や集中力が上がることが挙げられます。
・副業・育児・介護に割ける時間が増える
⇒それ以外の理由でも例えば、家族と過ごす時間が増える、というメリットも挙げられるでしょう。
・通勤時間を減らせる
⇒片道1時間の通勤時間で週5日出社すると、1ヶ月の通勤時間は、往復約40時間にものぼります。週に1回出社する日が減るということは、1ヶ月の通勤時間は約8時間も削減され、満員電車による精神的なストレスを約4日分削減できるということになります。現在は新型コロナの影響で、満員電車の割合が減少傾向にありますが、新型コロナの感染リスクを抑制するといった側面もあります。
・仕事の生産性向上に繋がる
⇒労働時間が減ることで時間に対する意識が高まり、短時間で効率よく仕事を進めることができるという効果もあります。
デメリット
・収入が減る
⇒みずほフィナンシャルグループの事例のように、休んだ分だけ給与が減るというパターンも。収入が減ることで、プライベートに使えるお金が少なくなり、メリットに活かしきれない可能性もあります。給与の減少は、将来受け取れる退職金や年金の額にも影響します。
・結果的に一日の勤務時間が伸びる
⇒週の就業時間は変えずに、週休3日制を導入する企業があるように、結果的に一日の労働時間が増えて残業、というパターンもあるようです。
・コミュニケーションロスが生じる
⇒チーム単位で仕事をしている人にとっては、平日に休みがあることで情報の社内共有や引き継ぎが上手くいかない場合もあります。社内のコミュニケーションツールの選定も重要度を増すでしょう。
他にもこのような意見が
・成果主義の徹底
成果主義が徹底されることで、労働時間内は今まで以上に成果を上げる必要が生じ、社員の感じるプレッシャーは否応なく高まります。特に、一日の労働時間を変えず、給料も下がらない場合には顕著です。
・人件費の増加
業種によっては、一日に最低限必要な人員の数が決まっていることがあります。その場合、一人当たりの出勤日数が減ることで人員が不足し、追加で人件費が必要になります。
・休日が被らなくなることで生産性が下がる
週休3日制度を導入する際、「土日に加えて好きな曜日を休みにできる」という制度にする会社も多くあります。その場合、毎日誰かが休みになってしまい、生産性が下がる恐れがあります。
・人件費削減の疑いも
そもそも、社員に休みを取らせて給料を減らし、人件費を削減する狙いなのではという不安の声もあります。特に、余剰社員を抱える会社ではリストラをするよりも簡単に人件費を削減できます。
さらに、週休3日は選択制にする会社が多いですが、週休を増やすよう圧力を書ける会社も出現しかねません。実質的な退職勧告として使用されることも考えられます。
・休日出勤
業務内容を整理せずに週休3日制度だけをただ導入した場合、仕事が回らなくなり、休日労働でせっかく増えた休みを潰すことになってしまいます。業務の効率化や、必要であれば人員の補充が必要です。
まとめ
終息が見通せない新型コロナウイルスとの戦いは長期戦が予想され、各企業には「感染防止と事業継続の両立」が求められます。
週休3日制には、収入減やコミュニケーションロスなどのデメリットも生じることは確かです。しかし、働き方改革に合わせた労働者の様々なメリットや、出社率を下げて感染爆発の防止に努めるといった点も考えられます。
本記事でご紹介した企業を中心に、今後の動向に注目が集まりそうです。
記事監修
【監修者】特定社会保険労務士 浅井 富美代
スポット社労士くん社会保険労務士法人社員社労士。大学卒業後、流通業においてマネージメント業の従事を経て、開業登録。首都圏を中心として、就業規則や労務問題のコンサルティング活動を展開中。給与計算などの間接部門のアウトソーシング事業にも積極的に取り組む。