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労働時間管理、タイムカードだけでは不十分? 出勤・退勤時刻と始業・終業時刻の違い

打刻時間と労働時間

労働基準法でいう労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下・指揮監督下に置かれている時間のことです。タイムカードの打刻時間は出勤・退勤の時刻であって、実際の労働時間を示す始業・終業の時刻ではありません。

〈タイムカードの打刻と実情が合わない例〉
*朝、早く来て、オフィスの入り口でタイムカードを打った後、コンビニで買った朝ごはんを食べながら個人のスマートフォンを見ていた。
*仕事が終わってから、友人との待ち合わせ時刻まで会社で時間を潰してから、タイムカードを打刻して会社を出た。

これらの場合でも、労働時間をタイムカードだけで管理していた場合、打刻時間=労働時間と推定される可能性が高いです。明らかに仕事をしていない時間まで労働時間とみなされることになります。

わかりやすい例が「京電工事件」です。


退職した元労働者が未払いの残業代を請求した例です。会社は、元労働者は業務時間中や時間外労働中に遊んでいたり事務所を離れていたりして業務を行っていなかったと主張しました。裁判所は「パソコンゲームに熱中したり、あるいは事務所を離れて仕事に就いていなかった時間が相当あることが窺われる」としながらも、労働時間の管理について「その管理をタイムカードで行っていたのであるから、そのタイムカードに打刻された時間の範囲内は、仕事に充てられていたものと事実上推定されるべき」とし、業務中に仕事をしていなかったことを証明するためには「別途時間管理者を選任し、その者に時計を片手に各従業員の毎日の残業状況をチェックさせ、記録化」する等の対応が必要だとしています。

参考

平成19(ワ)1560 不当解雇損害賠償等請求事件(通称 京電工諭旨解雇) 
平成21年4月23日 :

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/626/037626_hanrei.pdf

このような事態を防ぐためには、出勤・退勤時刻ではなく、始業・終業時刻の管理が必要です。労働者の様子をそんなに細かく見るのはやりすぎではないかと思われるかもしれませんが、本来、労働時間は使用者の指揮命令下にある時間です。残業も含めて、労働時間を使用者が管理するのは当然のことです。

あるいは、そもそも時間内に終わるような量の指示を与え、業務時間内は仕事に集中させ、残業をしていたら切り上げるよう伝えるといった仕組み作りも有効でしょう。

もし、退職した社員が残業代未払い等で労基署に相談した場合、その下労働者だけでなく、他の従業員の分まで労基署から指摘され、まとめて残業代を支払うことになります。そのとき、労働時間をタイムカードでしか管理しておらず、実際には働いていない時間まで労働時間とみなされると、非常に大きな出費になる可能性があります。

また、未払いにせずきちんと残業代を支払っていたとしても、やはり働いていない時間に対する給料が重なれば、大きな損失になってしまいます。

15分、30分で切り捨てると・・・

労働時間の管理の重要性を理解したところで、次はその管理方法の注意点をご説明します。

タイムカードで打刻すると、1分単位で時間が記録されます。15分や30分で時間を切り捨てることはできず、もし今まで切り捨てていた場合はその分の賃金を精算支給しなければなりません。

〈実際の例〉王将フードサービス

賃金算定の基準が30分になっていました。労働基準監督署の指導に基づいて社内調査をした結果、以下の未払い賃金が明らかになりました。

未払い賃金総額:2億5500万円
対象者:923人
対象期間:2013年7月~2014年2月までの7ヶ月間

日経新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXNASFL14H0I_U4A710C1000000/

これも、管理者がルールを理解した上で、正確に始業・終業時刻の管理をする必要があります。

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記事監修

【監修者】社会保険労務士 溝渕麻理

成蹊大学卒業後、三菱UFJ信託銀行、100ten.schoolセミナー講師・キャリアコンサルタントを経て、スポット社労士くんに入社。