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【比較】アメリカ企業と日本企業の人事制度の違いとは?

企業の人事制度は、経営者の考えや業界の文化によって変わってきますが、「お国柄」でも大きく変わります。それは、人の使い方と働き方には、その国の文化や価値観などが色濃く反映されるからです。

アメリカのビジネスに学ぶ日本企業は多いのですが、こと人事制度については、完全にアメリカナイズされることのほうが稀です。日米の人事制度は、今でもかなり異なります。

ただ、アメリカ企業の人事制度は合理的なので、彼らのやり方に学べることは多いでしょう。

この記事では、アメリカのジョブ・ディスクリプションと、日本のジョブ・ローテーションを比較しながら、日米の人事制度のよい点と悪い点を考察していきます。

米:ジョブ・ディスクリプションとは

ジョブ・ディスクリプション(以下、JD)は「職務内容記述書」と訳されます。業務の内容を詳しく書いた文書です。

JDは一般的に、企業の人材担当者が、社員1人ひとりに渡します。つまりJDを渡して「会社はあなたにこの仕事を命じます」「経営者はこのような成果を期待しています」と伝えているわけです。

JDに書かれていること

JDには次のような内容が書かれています。

・配属職場・役職・職務の目的・職務内容・責任の度合い・持っていなければならない知識、スキル、技能、資格・目標

社員は、JDの内容に問題がなければ、それに署名して自分のミッションに着手します。

JDで最も重要な項目は、職務内容です。職務内容によって、1)会社は何をさせたいのか、2)社員は何をしなければならないのか、が明確にわかります。

職務内容の明示によって評価の正当性が担保される

なぜJDのなかで職務内容が最も重要なのかというと、評価の正当性を担保できるからです。

例えば、JDによって「サイトの閲覧者数を3倍にする」という職務が与えられた社員がいたとします。この人がサイトの閲覧者数を2.5倍にしたら評価されますが、この人がサイトの売上を2倍にしても評価されません。

仮にこの人がサイトの売上を2倍にしたとしても、評価されるのはJDの職務内容に「サイトの売上を3倍にする」と書かれてある人です。

その代わり、何かの偶然で、つまりこの人が努力したわけでも特別な活動をしたわけでもなく、サイトの閲覧者数が3倍になったら、この人は高く評価されます。

JDは企業に何をもたらすのか

JDは企業に、効率化と生産性の向上をもたらすでしょう。

なぜなら企業の経営者や人材担当者は、すべてのJDの内容を実現できれば増益増収が達成できるようにJDをつくるからです。

経営者や人材担当者は、増益増収を達成するために必要な仕事を考え、それをJDを使って各社員に割り振るわけです。

またJDは企業に人件費の適正化をもたらすでしょう。

JDに書かれた目標を達成した人にボーナスを与え、目標を達成できなかった人の給与を減らすことができるからです。

日本:ジョブ・ローテーションとは

日本企業の多くは、ジョブ・ローテーションで適材適所を探ります。ジョブ・ローテーションとは、要するに「人事異動」です。

なぜ日本企業は人事異動を重視するのか

日本企業が人事異動を重視するのは、合理的な人事運営では達成できないことを成し遂げたいと考えるからです。もしくは、人材の可能性を引き出したいと考えるからです。

例えば、採用してすぐに経理に配属された人が、実は営業に向いているということは、十分考えられます。もしくは、法務の仕事をしたいと思って入社して法務に配属されても、実は企画業務に向いているかもしれません。

人の能力は単一の「ものさし」では測ることができません。また、仕事というものは得てして、やってみなければわからないところがあります。

そして、人事異動によって、これまでとはまったく異なる仕事やまったく異なる職場環境が与えられ、才能を開花させたりモチベーションを高めたりすることもできます。

日本企業は均質化を好む

「出る杭は打たれる」ということわざのとおり、日本では、グループ内や組織内に突出した能力の持ち主が現れると違和感を持つ人がいます。

その傾向を持つ日本企業もあって、そのような会社の経営者や管理職は、社内のすべての職場を均質化したいと考えます。

すべての職場を均質化するのに、人事異動はとても便利です。

例えば、A職場に優秀な人材が3人いたら、そのうちの1人をパフォーマンスが低いB職場に、別の1人を売上が低いC職場に異動させます。これでABCの3つの職場が均質化します。

人材を集中させることもできる

職場の均質化とは逆に、ある部署に優秀な人材を集中させて一点突破させることも、人事異動を使えば簡単に実施できます。

JDと人事異動のメリットとデメリット

JDと人事異動(ジョブ・ローテーション)は、真逆の人事戦略といえます。

JDは職務に人を張り付ける方法で、人事異動は人に職務を張り付けるイメージです。

では、アメリカ流のJDが生産性に優れていて、日本流の人事異動は時代遅れの非効率な方法なのかというと、一概にそうとはいえません。

経営者や人事担当者は、自社の風土や社員のモチベーションの高め方などを考慮して、JDの新規導入や人事異動の継続を検討してみてはいかがでしょうか。

JDに向いていて、人事異動に不向きな会社

JDのメリットを享受でき、人事異動のデメリットを受けるかもしれない会社は、業務内容がしっかり決まっている会社です。

例えば、これからネット通販(Eコマース)を主流にして、リアル店舗を減らしていこうとしている会社の場合、「やること」がかなり明確に決まるので、JDが向いているかもしれません。

<Eコマースに進出する企業がやるべきこと>

・ネット通販用サイトの開設・流通経路の整備・ネットマーケティングの実施・ITソリューションを提供するサポート企業との提携・顧客管理のデジタル化・ビッグデータの分析と管理など

Eコマースを本格的に導入するときに必要な業務は、それをできる人とできない人がかなり明確にわかれます。つまりEコマース企業は、特定の仕事ができる人を集めたり、育成したりしなければなりません。

そのときJDはとても便利です。採用面接にやってきた人や既存の社員たちに「この仕事を、この期間までに、このクオリティでやってもらえますか」と明示できるからです。

人事異動に向いていて、JDに不向きな会社

多角的な経営をしている、比較的規模が大きい会社では、JDよりも人事異動のほうが向いているかもしれません。

例えば、現在のイオン株式会社は、総合スーパー事業だけでなく、ヘルス、金融、ディベロッパー、農業などの領域に事業を展開しています(*1)。

このような企業の場合、人事異動に加えて出向も駆使して適材適所を探ったほうが効果的です。しかもイオングループの従業員数は58万人に及ぶので、JDを作成するだけでも相当な事務量になってしまいます(*2)。

イオンほどの大企業でなくても、例えば、研究、開発、製造、営業、販売を一貫して手掛けているメーカーも、人事異動のほうが、JDより効果的に人材育成ができるかもしれません。

多くのメーカーは、技術系営業職を置いています(*3)。入社時から技術系の仕事に従事させ、ある程度スキルが身についた段階で営業に回します。技術に精通した人材が営業をすると、顧客企業のやりたいことが手に取るようにわかります。また、納品したあとのフォローも、技術系営業職なら難なくこなせます。

ある1人の技術者を、そのまま技術者として育成し続けるのか、それとも技術系営業職に転身させるかは、適正を見極めて判断しなければなりません。それには柔軟に対応できる人事異動が便利です。

*1:https://www.aeon.info/company/group/

*2:https://www.aeon.info/company/

*3:https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/12493/

まとめ~アメリカ流を学んで日本流を続けることも可能

人事制度は人の使い方と働き方に大きく関わる仕組みなので、本来は時代や経済の流れによって変更してしかるべきものです。労働の在り方は、時代や経済によって変わってくるからです。

この記事では、アメリカ人事の代表としてジョブ・ディスクリプションを、日本人事の代表として人事異動(ジョブ・ローテーション)を取り上げましたが、もちろんその他の仕組みでも日米の人事制度は大きく違います。

日本流の人事制度を続けてきて行き詰まりを感じている経営者や人事部長は、一度アメリカ流を勉強してみてはいかがでしょうか。

従来の人事制度を変えるにしても変えないにしても、アメリカ流を知ることで日本流の長所と短所が鮮明になります。それを知ってから、変えるか維持するか決めてはいかがでしょうか。そこに活路を見出せることもありますし、社内の閉塞感は人事制度のせいではないことがわかるかもしれません。

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記事監修

classwork編集部

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