Powered by.

【全国平均28円UP】10月より最低賃金が上がります

パート社員から最低賃金があがるので時給をあげてください、といわれたのですが最低賃金とはなんですか?
パートも対象なのでしょうか?

最低賃金は最低賃金法という法で定められている制度で、不当に低い賃金で労働者が働くことがないように国が賃金の最低基準を定めているものです。パートなどの社員身分に関係なくすべての労働者が対象で、個別の労働契約よりも優先されます。
都道府県により物価が違うことも考慮して毎年見直しされます。特定の産業を対象とした最低賃金の基準もあります。
最低賃金制度について詳しく説明しましょう 。

最低賃金とは

最低賃金とは事業者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額のことです。国が最低賃金法に基づいた最低賃金制度で定めています。最低賃金は労働者を守るための制度のため、対象はすべての労働者です。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも対象となります。

各都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。事業者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならなりません。

「特定(産業別)最低賃金」は「地域別最低賃金」よりも高い金額水準で定められており、地域別と特定(産業別)の両方の最低賃金が同時に適用される労働者には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないルールです。

改正内容

最低賃金は毎年10月1日より適用されます。2021年も10月1日から改正されます。2020年度はコロナウイルスの影響もあり最低賃金の引上げを見送った都道府県がありましたが、2021年度は47都道府県で大幅な上昇となります。

最低賃金の引き上げ幅は47都道府県で28円~32円の引上げ(引上げ額が28円は40都道府県、29円は4県、30円は2県、32円は1県)です。改定額の全国加重平均額は930円となり、2020年度の902円より28円のアップとなっています

引き上げ額が一番大きかったのは島根県で32円アップして824円となります。東京都は28円アップの1,041円が改正後の最低賃金です。

都道府県別の最低賃金は厚生労働省の「最低賃金」サイで確認することができます。

特定(産業別)最低賃金は全国で227件設定されています。厚生労働省では適用労働者が約292万人におよぶとしています。2019年度に特定(産業別)最低賃金に設定されていたのは174件でしたので、数年で大幅に増加しています。最低賃金を確認する場合には該当していないか必ず確認しましょう。

特定(産業別)最低賃金は厚生労働省の「特定最低賃金の全国一覧」サイトで確認することができます。

参考:厚生労働省|全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました

どのような影響がある?

最低賃金の上昇は企業の人件費に大きく影響します。最低賃金が上がれば労働者に支払う賃金だけでなく、賃金をもとに決まる健康保険や厚生年金、雇用保険などの会社負担の保険料が増えます。それは法定福利費の増加となり、企業の利益にも多大な影響を及ぼします。

仮に東京都の最低賃金で週40時間:月160時間働く労働契約を結んでいる45歳のパート社員を例に計算してみましょう。(労働保険料は保険料が産業別やメリット制などの影響もあるので除いて考えます)

最低賃金は1,013円⇒1,041円にアップします。

最低賃金改正後の月額賃金は162,080⇒166,560円となり4,480円増加します。

これにより健康保険(介護保険含む)と厚生年金の標準報酬月額の等級が13等級( 10等級 )から14等級 ( 11等級 ) に変更なり、会社負担の保険料が健康保険582円と厚生年金915円増えます。雇用保険の事業主負担率6/1,000をもとに計算した27円を加えた1,524円が法定福利費の増加額となります。

標準報酬月額一覧

出典:協会けんぽ|令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

賃金増加分4,480円と法定福利費増加分1,524円の合計6,004円が人件費の増加額です。これは1カ月分ですから、1年では72,048円になります。同じ条件のパートタイマーが10名いれば、会社としては年間720,480円の人件費の増加となり、利益に大きな影響をおよぼすことになります。

事業者はいつから、何をすべき?

事業者は労働者の賃金が最低賃金を下回っていないか確認して対応しなければなりません。時給で働く労働者だけでなく、月給で働く労働者も1カ月の平均所定労働時間を使い時給換算して最低賃金を下回っていないことを確認しましょう。

出来高払制その他の請負制は、賃金の総額を当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額で計算します。

最低賃金の計算方法

出典:厚生労働省|最低賃金

また、派遣社員は所属する派遣会社ではなく、派遣先の企業の最低賃金が基準となりますので覚えておきましょう。

もし、現在の賃金が最低賃金以下であれば、待遇を改善しなければなりません。期間の定めのある雇用契約の途中であったとしても、10月1日以降については最低賃金をクリアした金額で労働契約を結ばなければなりませんので注意しましょう。

仮に雇用契約の変更していない場合でも、最低賃金に満たない差額を労働者に支払わなければなりません。

最低賃金法には罰則もあります。地域別最低賃金に違反した場合は50万円以下の罰金、特定(産業別)最低賃金に違反した場合には30万円以下の罰金が科されます。

給与計算の実務においては、改正後の最低賃金の適用が10月1日からとなっていますので自社の賃金締日を確認して対応しなければなりません。賃金締日により10月1日前と以降をわけて期間計算しなければならない可能性もありますので注意が必要です。

情報入手先

最低賃金は都道府県や産業別にことなり複雑です。罰則もありますので、知らずに違反していることがないようにしましょう。最低賃金に満たない差額は未払い賃金となってしまいますので注意しなければなりません。

厚生労働省が最低賃金を周知するために専用サイトを立ち上げていますので活用しましょう。

最低賃金サイト

業務改善助成金

最低賃金の上昇は企業の人件費増加になり、利益に影響します。負担を感じる事業者もいると思いますが国も対策をしています。事業者の負担を軽減する方法のひとつとして「業務改善助成金」があります。

業務改善助成金は中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。

生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。

2021年8月1日から、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に業況が厳しい中小企業・小規模事業者に対して、対象人数の拡大や助成上限額を引き上げる特例的な要件の緩和・拡充が行われています。

業務改善助成金の助成内容

業務改善助成金は要件をみたすと賃上げ額と人数により申請できるコースが下の図のようにわかれます。

特例で新設された10人以上の上限額区分は、次の①②いずれかに該当する事業場が対象となりますので注意しましょう。

①賃金要件:事業場内最低賃金900円未満の事業場

②生産量要件:売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3ヶ月間の月平均値が前年又は前々年の同じ月に比べて、30%以上減少している事業者

助成金のコース

出典:厚生労働省|プレスリリース「業務改善助成金」の特例的な要件の緩和・拡充を8月から行います

業務改善助成金の支給対象者・支給の要件

(1) 賃金引上計画を策定すること 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)

(2) 引上げ後の賃金額を支払うこと

(3) 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと

① 単なる経費削減のための経費

② 職場環境を改善するための経費

③ 通常の事業活動に伴う経費  などは除きます。

(4) 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など

業務改善助成の申請方法

業務改善計画(設備投資などの実施計画)と賃金引上計画(事業場内最低賃金の引上計画)を記載した交付申請書(様式第1号)を作成し、都道府県労働局に提出することから始まります。助成金の交付が決定した後に事業実績の報告をして助成金が支払われます。

今年度の申請期限は2022年1月31日です。また、特例により年度内に2回まで申請することが可能となっています。

申請方法

出典:厚生労働省|最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者支援事業

参考:厚生労働省|業務改善助成リーフレット

最低賃金は守らなければならない制度なのですね。労働者の賃金を確認してみます。
ただ、会社の経営におよぼす影響も大きそうです。助成金についても検討してみます。

そうですね。できるだけ早めに最低賃金を下回らないか確認してください。下回るようですと労働契約の変更や賃金テーブルの見直し、給与計算でも調整が必要になってきますから。
人件費が増加してしまい大変だと思いますが、業務改善助成もありますから、うまく活用できるとよいですね。

オンラインセミナー(無料)のご案内

無料オンラインセミナー 
経営者に知っていて欲しい助成金セミナー

早い者勝ちの助成金から組織作りに活用できる助成金など、
貴社のお役立ち情報をお届けします。

【セミナー内容】
● 知っておきたい助成金の基礎知識
⇒ 創業したての会社様、これから助成金を活用したい会社は必見です。
● 助成金活用方法のご案内
⇒ 従業員の【採用→教育訓練→成長→定着→貢献】をステップとしてご紹介。
● おススメ東京都の奨励金
⇒ 要点まとめて、コンパクトにご紹介。

【このセミナーで学べる事】
● 令和4年度助成金の速報
● 助成金を活用した組織作り
● 助成金の受給総額を約3割増やす方法

申し込みはこちらから
https://www.spot-seminar.com/



******************************************************
スポット社労士くん社会保険労務士法人
TEL 03-6272-6183 / FAX 03-6701-7312
セミナー担当:田辺、細田、越智
メール info@spot-s.jp
ホームページ http://www.spot-s.jp

関連記事

記事監修

classwork編集部

クラスワークは、人事、労務のお役立ち情報を楽しく、わかりやすく提供するメディアです。「知りたかった事のズバリ」をお届けします。