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男性の育休取得!会社はどう対応する?

男性社員が育児休業を取得したいと申し出てきました。権利だということは理解していますが、我が社では女性しか育休を取得した社員がいなくて、はじめてのことで戸惑っています・・・。

最近は男性で育休を取得する人も少しずつ増えてきています。
おっしゃるように権利ですから、会社側は拒否することはできません。しかし、現実には上司や所属部署の社員の理解が得られずトラブルになることもあるようです。
男性の育休について、これまでの経緯や制度の内容をご説明します 。

男性の育児休業の現状

日本人男性が育児・家事に参加する時間は先進国の中でも最低水準で、それが少子化や女性の就労率が低いことの一因だともいわれてきました。

2010年6月17日より厚生労働省は、男性の子育て参加や育児休業取得の促進等を目的とした「イクメンプロジェクト」を開始しました。同年6月30日には改正育児・介護休業法も施行され、男性の育児参加や育児休業取得が推進されました。

しかし、制度は整備されたものの、男性の取得率はなかなかあがらないのが現状です。ユニセフの世界の子育て支援政策に関する報告書でも、日本男性の取得可能な育児制度は高評価である一方、取得率は低く、制度が活用されていない実状が報告されています。

厚生労働省のイクメンプロジェクトでは、男性の育児と仕事の両立を積極的に推進する企業を「イクメン推進企業」として表彰して取得率アップに取り組んでいます。

2019年の受賞企業はアフラック生命保険株式会社で、男性の育児参画を目指し、育児休業取得を目標の1つに設定しています。

イクメン企業アワード

引用:厚生労働省|イクメン企業アワード2019 受賞企業の取組事例集 2019

男性の育児休業の取得率は?

男性の育児休業の取得率は2018年(平成30年)度の実績で6.16%です。同年の女性の取得率が82.2%ですから13倍以上の開きがあります。

育児休業の取得状況

引用:厚生労働省|男性の育児休業の取得状況と 取得促進のための取組について

2020年5月29日に閣議決定した少子化社会対策大綱では、男性の育児休業取得率は2020年:13%、2025年:30%を目標としています。

しかし、2018年の実績を考えると2020年の目標を達成することも難しいと思われます。

男性が取得できる育児休業について

育児・介護休業法では育児休業について次のように定めています。

○子が1歳(保育所に入所できないなど、一定の場合は、最長2歳)に達するまでの育児休業の権利を保障

○父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月に達するまでの間の1年間【パパ・ママ育休プラス】

○父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、再度の育児休業の取得が可能

男性が育児休業を取得する場合は具体的にどのように取得することになるのでしょうか。

(1) 育児休業開始日はいつから?

男性は配偶者の出産日から育児休業を取得できます。女性は出産後8週間は産休です。同じように休んでいても男女で利用している制度は違うということを覚えておきましょう。

育児休業の期間は基本1年間ですが、両親ともに育児休業を取得する場合に限り、1年2カ月まで育児休業の取得可能期間が延長されます。

また、男性が配偶者の出産後8週間以内に育児休業を取得した場合は、育休を再度取得することが可能です。

男性の育児休業のイメージ

引用:厚生労働省|男性の育児休業の取得状況と 取得促進のための取組について

(2) 雇用保険の育児休業給付金の金額と請求方法

男性は配偶者の出産日から育児休業に入れます。休業期間の給付金は雇用保険の育児休業給付金を申請します。

女性は出産後8週間までは健康保険の出産手当金の対象です。人事担当者としては混乱しやすいところですが、手続が違いますので注意しましょう。

引用:厚生労働省|男性の育児休業の取得状況と 取得促進のための取組について

雇用保険の育児休業給付金は例えば次のように計算します。

(1)休業開始から6カ月まで 
 育児休業開始前6カ月の給与÷180日×67%
 支給上限額304,314円
(2)休業開始から6カ月以降 
 育児休業開始前6カ月の給与÷180日×50%
 支給上限額227,100円  

(対象期間に賃金が支払われていない場合の例)

給付金の請求は2か月ごとに育児休業給付金支給申請書を会社が提出します。従業員の捺印も必要です。

育児休業を再取得する時は、同一の子に対する育児休業の再取得に関する確認書をハローワークに提出しなければなりませんので忘れずに準備しましょう。

確認書

引用:厚生労働省|鳥取ハローワーク資料 P.5

育児休業中の健康保険や厚生年金の保険料は会社が申請することで免除されます。この点は女性と同じです。

免除期間は保険料を納めていないので、将来の年金額には反映されません。厚生年金保険の加入期間にカウントされるだけです。

従業員の出産についてはこちらの「従業員の産休・育休時会社が行う手続き」記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

会社が受けられる助成金

育児休業の取得を推進するためには、制度整備休業中の社員の代替要員の用意にお金がかかります。政府は男性が育児休業を取得しやすい環境を整備するための助成金「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」を用意しています。活用することで育児休業を取得しやすい環境を整えられますので、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

両立支援等助成金(出生時両立支援コース)は企業規模により受けられる金額が異なります。また、第1子と第2子では助成額が異なりますので確認しておきましょう。

●両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

【助成対象】

男性が育児休業や育児目的の休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、その取組によって男性労働者に育児休業や育児目的休暇を取得させた事業主

【主な支給要件】

○男性労働者の育休取得

・男性が育児休業を取得しやすい職場風土づくりのため、

 ①管理職による育休取得の勧奨

 ②管理職の理解を深める研修を実施する

などの取り組みを行うこと。

・男性が子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得すること。

○育児目的休暇の導入・利用

・子の出生前後に、育児や配偶者の出産支援のために取得できる休暇制度を導入すること。

・男性が育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりのため、前①②に準じた取り組みを行うこと。

・上記の新たに導入した育児目的休暇制度を、男性が、子の出生前6週間または出生後8週間以内に合計して8日以上(中小企業は5日以上)取得すること。

給付金の支給額
給付金の支給額
給付金支給の流れ
給付金支給の流れ

出生時両立支援コースのリーフレットはこちらから確認できます。

職場が男性の育休取得を取りやすくするメリット

会社が男性の育休取得を取りやすくするメリットについて考えてみましょう。

(1) 企業イメージのアップ

最近はイクメン企業アワードやホワイト企業認定など、いかに社員を大切にしているかが企業イメージに大きく影響します。転職サイトや新卒の企業選択の基準にもなっています。

SNSの発展により、気づかぬうちに「男性の育休取得に理解がない企業」などと風評が広まるリスクもあります。

男性の育児休業取得率の高さは企業イメージをアップさせます。

(2) 優秀な人材の確保

企業イメージがあがれば優秀な人材は獲得しやすくなりますが、在籍している人材の流出を防ぐのも重要です。子育て世代の男性はワークライフバランスを重視していますので、会社が働きやすい環境を提供しているか、制度改革を積極的に行っているかを見ています。法律で定められた権利も行使できないとなると見切って転職することもあります。

企業が従業員を大切にしている姿勢を示すことで優秀な人材の流出を防ぐことができます。

(3) 社内の軋轢の緩和

育児休業取得率は男女間で大きな差があります。共働き家庭が増加しているので、男性に育児休業の取得を求める配偶者もいるようで、「育児休業の取得しやすさ」について男女の不公平感は軋轢をうむこともあります。

男性が育児休業を取得しやすい環境を整えることで不公平感や軋轢を緩和できます。

会社の将来の発展を支える優秀な人材を逃がさないためにも、男性の育児休業取得に理解のある姿勢を示したほうがメリットは大きいのではないでしょうか。

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記事監修

【監修者】社会保険労務士 金山杏佑子

classwork編集長。社会保険労務士事務所ヨルベ代表。スタートアップの労務管理に注力。