人材紹介プラットフォームを運営する際に留意すべきこと
本記事では人材紹介プラットフォームを運営する際に留意すべきことについて、許可取得の観点から解説します。
有料職業紹介事業許可を取得する必要があるか
人材紹介プラットフォームやそれに類似したメディアを運営するにあたって、「有料職業紹介事業許可を取得する必要があるか」の判断が難しいとのご相談を受けることがしばしばあります。
サービスの「職業紹介事業」への該当性を判断するにあたっては、求職者と求人者の間の「雇用関係の成立をあっせん」しているとみなされるかどうかがポイントとなります。
職業安定法第4条 "この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。"
一方で、
求人情報または求職者情報を提供するのみで、求人の申込み・求職の申込みを受けず、雇用関係の成立のあっせんを行わない、いわゆる「情報提供」は職業紹介には該当せず、許可は必要ありません。
では、提供するサービスの内容がたんなる「情報提供」と言えるのか、それとも「雇用契約の成立をあっせん」しているとみなされるのか、についてはどのように判断すれば良いのでしょうか。
「雇用関係の成立のあっせん」にあたるかどうかの判断要素
「雇用関係の成立をあっせん」しているかどうかの判断にあたっては、次のような視点から検討してみる必要があります。
サービス運営者が
・求職者の情報を求人者に提供するにあたり、情報を「加工」しているか
・求職者と求人者との間の連絡を「仲介」しているか
順に見ていきましょう。
まず、1. 情報の「加工」についてです。
具体的には、求職者から得た求職者の情報を求人者が閲覧する際に、検索のお手伝いをするような機能がある場合、「あっせん(の一部)」とみなされる可能性があります。
例えば、
✔︎「この人はどうですか?」などといったサジェスト機能
✔︎求職者の能力・特性に応じてあらかじめフィルタリングした結果だけを求人者側に提供する
などです。
ただし、検索フィルタを設置すること自体は加工にはあたりません。あくまでもサービス運営者において求職者の情報を意図的に操作したり、検索を容易にするような変更を加えることを指します。
次に、2. 連絡の「仲介」についてです。
双方からの問い合わせに対応する程度であれば問題はありませんが、サービス運営者が間に入って連絡を仲介したり、トラブルがあった場合に介入すると、「あっせん(の一部)」とみなされる可能性が高まります。
「職業紹介」ではなく、単なる「情報提供」であると言えるためには、求人者側が求職者側の情報に勝手にアクセスできるような状態である必要があります。
その他の注意点
なお、仮に「情報提供」であり、「職業紹介」にはあたらないことが明確(=職業紹介事業許可の取得は不要)であったとしても、
・掲載する求職者の個人情報が保護されていること
・情報を開示するにあたって求職者との間で取り決めがなされていること
は、許可の有無にかかわらず守られている必要がありますので、改めて運営体制を確認しておきましょう。
サービス運営にあたって目を通しておくと良いもの
今回ご紹介している「情報提供」と「職業紹介」にかかる点に関しては、厚生労働省から、以下の基準と指針が出されていますので、一度目を通しておかれると良いのではないかと思います。
▶︎民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介事業の区分に関する基準
有料職業紹介事業許可を取得するべきなのか?
有料職業紹介事業に該当する可能性があるにもかかわらず、許可を取得していない場合に起きうる問題点として、どのようなものが考えられるでしょうか。
例えば、融資の申し込みを行った際の融資判断に影響するような事例が挙げられます。
ビジネスモデルについて金融機関から指摘を受け、急いで許可の取得を検討したとしても、許可申請から実際に許可が下りるまでには少なくとも3ヶ月程度は要します。
また、有料職業紹介事業に該当する可能性が高い場合には、労働局の指導の対象ともなり得ます。
懸念を払拭しておきたい場合は早めに有料職業紹介事業許可を取得するか、もしくは、サービスの有料職業紹介事業該当性について労働局ないしは弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談されるのがよいと思います。
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記事監修
【監修者】社会保険労務士 金山杏佑子
classwork編集長。社会保険労務士事務所ヨルベ 代表社会保険労務士。スタートアップの労務管理に注力。note