リモートワーク規程は作成すべき?テレワークよくあるQ&A5選
新型コロナの影響を受けて在宅勤務(テレワーク)が増加。一方で、在宅勤務の解除を選択する企業も徐々に増加しています。
テレワーク運用開始直後には見えてこなかったお悩みや疑問点を改めて整理しておきましょう。
Q1.光熱費や通信費について
テレワーク勤務者の光熱費や通信費負担はどうすればよいのでしょうか?法的な決まりはありますか?
テレワークにかかる費用負担は就業規則やテレワーク規程などで事前に定めて周知する必要があります。明確に定めていなければ従業員に負担させてよいというものでもありません。
しかし、通信回線など自宅で使っていると私用と業務できっちりわけることは難しいのが現状です。
会社によっては、日額数百円や、月額一律3,000円から10,000円程度の在宅手当を支給している場合もあります。
【リモートワーク手当や在宅手当の支給額の例】
・NTTグループ:日額200円
・ホンダ:日額250円
・ソフトバンク:月額4,000円
・富士通:月額5,000円
なかには「テレワークにかかる費用は自己負担」とルールを定めている会社もあるようです。注意しなければならないのは、取引先への切手代などは明確に業務に使用したことが確認できるため、テレワーク費用とするのは無理があります。テレワーク以前と同様に、出金伝票で精算することが適切です。
一律で支給するテレワーク手当は、基本的に給与課税の対象となり、源泉徴収の対象となります。その場合であっても、出金伝票で精算する切手代などは立替金であるため課税対象とはなりませんので注意しましょう。
Q2.通勤費について
テレワーク勤務者の通勤手当はどうすればよいでしょうか?課税?非課税?通勤手当を支給しないこともできるのでしょうか。
通勤費は労働基準法で支払いが義務付けられていません。支給の根拠は会社ごとに定めている賃金規程などです。
通常は、規程で通勤費の支給方法について明記されています。規程で「通勤費は実費を支給する」となっていれば、テレワーク勤務者に通勤費を支給する必要はありません。
特段の定めがない場合はテレワーク勤務者の通勤費についての条項を追加して明文化しておくとよいでしょう。
実際にホンダではテレワーク勤務者の通勤手当を見直す動きもあり、テレワーク勤務者に対して支給する通勤費を実費精算に切り替える企業が発生しています。
通勤費の支給は、公共交通機関は100,000円までが非課税、マイカーは通勤距離により一定額まで非課税です。ただし、一律支給の場合は金額に関係なく給与課税します。実費支給の場合は上限以内であれば給与課税しませんので覚えておきましょう。

Q3.労災保険について
テレワーク中の労災保険はどうなりますか?労災事故が発生した場合は労災保険を使えるのでしょうか?
テレワークであっても労災事故が発生する可能性はあります。在宅勤務でも事業主の支配下であれば労災の対象です。
人事担当者としては対応に迷うこともあると思いますが、厚生労働省が「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」を示しています。
***引用***
労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。

通勤災害については在宅勤務であれば通勤していませんので対象外ですが、サテライトオフィスへ出勤しているのであれば通勤災害の対象となります。
テレワーク中の労災事故の個別事案については、管轄の都道府県労働局・労働基準監督署に相談することになりますが、人事担当者が直接問い合わせするのはハードルが高いこともあります。必要に応じて専門家である社労士を通して問い合わせするとよいでしょう。
Q4.みなし労働時間制について
テレワーク中に、みなし労働時間制は採用できないのでしょうか?
テレワーク中においても一定の条件を満たせば事業場外みなし労働時間制が採用できます。
使用者の具体的な指揮監督がおよばず、労働時間を算定することが困難であるというためには、次の要件をいずれも満たさなければなりません。
【事業場外みなし労働時間制適用の要件】
1.情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態にしておくこととされていないこと
具体的には「使用者の指示に即応する義務がない状態である」ことをいい、①かつ②の状態であれば該当しません。
①使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて随時具体的指示を行うことが可能である
②使用者からの具体的な指示に備えて待機しつつ実作業を行っている状態または手待ち状態で待機している状態である
2.随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
業務の遂行のための具体的な指示とは次のようなものは対象となりません。
①当該業務の目的
②目標
③期限等の基本的事項を指示
④これら基本的事項について所要の変更の指示
①~④のような指示は具体的な指示に含まれませんので、具体的な指示の範囲を認識しておきましょう。
また、必要に応じ、実態に合ったみなし時間となっているかを労使で確認して、業務量を見直したり、労働時間の実態に合わせて労使協定の締結や見直しをしていきましょう。
Q5.リモートワーク規定について
リモートワーク規程は作成すべき?作成しなかったことで懸念されることや問題点はどのようなものがありますか?
テレワークは通常勤務にはないさまざまな事情が発生します。
今までご説明したような通信費の負担にはじまり、在宅手当や通勤費などの手当の支給の問題から労災や人事評価まで広範囲です。
これらのトラブルを未然に防ぐため、一般的にはテレワークを導入する際に就業規則を変更します。
就業規則とは別にテレワーク勤務者を対象とした「リモートワーク規程」などを制定する企業もあります。
規程を作成する場合は、労使双方が以下のような共通の認識をもって齟齬(そご)のないようにしましょう。
・導入の目的
・労働者の範囲
・対象となる業務
・テレワークの方法
・費用や手当
・人事評価の方法
リモートワーク規程を定めて周知することで費用や手当の扱いが明確になります。通信費をめぐるトラブルなどで争いになった場合も、あらかじめ規程で定めており、その定めに則って対応していれば基本的には問題になりません。
テレワーク勤務者も通常の勤務者と同様に労働基準法の対象であり、労災保険の対象でもあります。
そのため労働契約で通常の勤務者のように就業場所を定めなければなりません。テレワークしている労働時間を管理する必要がありますので、始業と終業および勤務時間中の在席確認の方法も定めておきましょう。
就業場所は従業員の自宅と明記して、パソコンのログで始業と終業や在席を確認するなどの具体的な方法を規程で制定しましょう。また、労働条件や評価についても定めて周知しましょう。
これらを定めていないと、労使間の認識の違いによりトラブルになることもあります。先手を打って対応することが望ましいでしょう。
記事監修
【監修者】社会保険労務士 金山杏佑子
classwork編集長。社会保険労務士事務所ヨルベ 代表社会保険労務士。スタートアップの労務管理に注力。note