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【ロードマップ事例付】レジリエンス認証とBCP(事業継続計画)助成金の紹介

レジリエンスは「弾力性」という意味です。外から強い衝撃を受けてもすぐに壊れない「しなやかな強さ」と理解されることもあります。

レジリエンス認証」は、大きな被害を受けたあとでも事業継続ができる体制を整えてある企業を評価する仕組みです。

ビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)は「事業継続計画」と訳され、企業がテロや災害などを受けて危機的状況下に置かれても、生き延びることができる策を盛り込んだ戦略のことです。

東京都中小企業振興公社は、「BCP実践促進助成金」(以下、BCP助成金)で、BCPを策定して実践している中小企業などに最大1,500万円を交付しています。

レジリエンスとBCPは、密接不可分の関係にあります。

企業を襲う危機に、感染症が加わった今こそ、経営者がレジリエンス認証とBCP助成金を真剣に検討するときといえるでしょう。

レジリエンス認証の概要

まず、レジリエンス認証制度についてみていきましょう。

生い立ち

内閣官房に国土強靭推進室という組織があり、ここが2016年に「国土強靭化貢献団体の認証に関するガイドライン」を作成しました。2018年にはその改訂版をつくっています(*1)。

*1:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/pdf/ninsyo_gl.pdf

国土強靭化は、大規模自然災害などによって生じる最悪の事態を念頭に置いて政策をつくっていく、という政府の方針です。

キャッチフレーズは「国家百年の国づくり」と「いかなる事態が発生しても機能不全に陥らない経済社会システムづくり」です。

国土を強靭にするには民間企業の取り組みが欠かせないため、レジリエンスに取り組んでいる企業などを、国土強靭化貢献団体として認証することにしました。

これがレジリエンス認証制度の「起源」になります。

主催団体と認証済の企業

レジリエンス認証制度を運営しているのは、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会(本社・東京都千代田区)です。

2020年3月現在、レジリエンス認証を受けた団体は195にのぼります。認証を受けた主な企業は次のとおりです。

・ローソン・イオン・佐川急便・大成建設・三越伊勢丹新宿店・名古屋鉄道・IHI・鹿島建設・中部国際空港・日本航空・ソニー生命など

企業以外にも認証を受けている組織や団体もあります。例えば以下のとおりです。

・日本生活共同組合連合会・学校法人関西大学・医療法人社団友愛会・高知県立あき総合病院・社会福祉法人海光会・士幌町農業協同組合など

生協、大学、病院、福祉、農協も、最悪の事態が起きても事業継続していかなければならないのは同じです。

企業が「何をすれば」認証されるのか

レジリエンス認証を希望する企業や団体は、レジリエンスジャパン推進協議会に申請し、書類審査の1次審査と、対面面接を受ける2次審査を受けることになります。

企業などは「何をすれば」認証されるのでしょうか。

レジリエンス認証団体には、次の14項目の実施が求められます(*2)。

*2:http://www.resilience-jp.biz/certification/application/#title03

1、事業継続に関する方針を策定する

事業継続に関する方針とは、組織全体で事業継続に取り組む必要性や危機が起きたときの判断や行動の指針などのことです。

2、事業継続のための分析と検討を行う

危機が起きたとき、企業はまず重要業務を復旧させなければなりません。そのため企業は、数ある業務のなかから重要業務を定め、それをいつまでに復旧させるか決める必要があります。

そして重要業務の目標復旧時間は、自社の都合だけでなく、顧客、取引先、地域の状況によっても変わってきます。

こうした考察や取り組みが、事業継続のための分析と検討になります。

3、事業継続戦略・対策を検討して決定する

企業は、2の分析と検討を踏まえ、事業継続戦略と事業継続戦略を定めなければなりません。

4、事業継続計画(BCP)を策定する

1~3を実現する体制や手順を示したBCPを策定します。

BCPは、危機的状況下でどのように重要業務を復旧させるかを盛り込んだ計画のことです。詳しくは次の章で解説します。

5、事業継続を見直し、改善できる仕組みを持つ

BCPは、事業環境の変化などに対応したものでなければなりません。そのため、事業継続する方法を定期的に見直して、BCPを改善していく必要があります。

6、事前対策を実施する

事前対策とは具体的に、施設・設備・備品の改善と強化、人材確保、体制整備のことです。事前対策は、重要業務を目標時間内に復旧させることに役立つ内容でなければなりません。

以下、項目のみご紹介します。

7、教育や訓練を定期的に実施して、改善を行う

8、事業継続に関する一定の経験と知識を有する者が担当している

9、法令に違反する重大な事実がない

10、社会貢献が定められている

11、社会貢献の実績がある

12、従業員などの社会貢献を支援する制度がある

13、従業員が社会貢献を行った実績がある

14、上記以外の社会貢献が実施されている

この14項目からわかることは、認証を希望する企業は、実際に危機的状況に陥ったとき、重要業務を確実かつ短時間に復旧できるかどうかが問われている、ということです。

BCPの概要とBCP助成金の内容

レジリエンス認証を受けるには、BCPを策定する必要があります。

BCPをつくっておけば、企業などは緊急事態が起きたあとに速やかに立ち直ることができます。そのため中小企業庁も「中小企業BCP策定運用指針」を定めて、企業のBCPづくりを後押ししています。

では、何をもってBCPといえるのでしょうか。

中小企業BCP策定運用指針と、東京都中小企業振興公社の「BCP実践促進助成金」の概要を知れば、BCPの姿が鮮明に見えてくるはずです。

中小企業BCP策定運用指針の解説

中小企業庁は企業に、BCPに以下の内容を盛り込むようアドバイスしています。

・企業が自然災害、大天災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇したときに、事業資産の損害を最小限にとどめる方法
・中核となる事業(重要業務)の継続または早期復旧を可能にする方法
・緊急事態に備えて平常時に行うべき活動

中小企業庁がBCPづくりをすすめる理由は明白です。緊急事態に遭遇しても、倒産したり、事業縮小したり、従業員を解雇したりしないで済むようにするためです。

中小企業庁が想定している緊急事態とは、設備事故、火災、テロ攻撃、地震、風水害、感染症などです。

BCPを策定するための準備

BCPをつくるには、事前の準備が必要になります。

緊急事態に遭遇すると、経営資源が大幅に減るので、復旧できる事業が限られます。そのため、BCPづくりは中核事業(重要業務)の特定から始まります。そして中核事業の特定とは、復旧を後回しにする事業を選ぶことでもあります。

BCPでは「いつまでに復旧するのか」という数値目標を定める必要があります。ただ、その目標復旧時間が、企業の希望的観測では意味がありません。

そのため、BCPをつくるには次の準備が必要になります。

・顧客と、緊急時に提供できるサービスレベルを協議する

・取引先と、緊急時に提供してもらえるサービスレベルを協議する

・事業拠点、生産設備、仕入品の調達先の代替策を用意しておく

・すべての従業員に、BCPの内容を周知する

「何をすれば」BCP助成金を受給できるのか

東京都中小企業振興公社の「BCP実践促進助成金」の概要は次のとおりです(*3)。

*3:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/rmepal0000000emd-att/bcp_youkou.pdf

・助成対象事業者:同公社の「BCP策定支援講座」を受講し、同講座の内容を踏まえてBCPをつくっている、都内に本店を持つ企業など

★助成対象経費:緊急時にBCPを実践するために購入する、設備や物品などの費用

・助成率:中小企業は助成対象経費の1/2以内、小規模企業者は2/3以内。ただし、感染症対策を含むBCPを実践する場合は4/5以内

・助成額:10万~1,500万円

・申請受付期間:2021年1月29日まで(計6期に分けて受け付け)

ここで注目したいのは、★印をつけた助成対象経費です。

助成金を受給するには、実際にBCPを実践するための「ツール」を用意しなければなりません。

このツールこそ、企業のサバイバル(生き残り)に欠かせないものになります。

この助成金に応募しない企業も、このBCP実践ツールは準備しておいたほうがよいでしょう。

緊急時にBCPを実践するために必要な設備や物品とは(BCP実践ツールとは)

企業がこの助成金を受給するには、次の設備や物品を購入する必要があります(*4)。

*4:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/bcp.html

1、自家発電装置や蓄電池

2、クラウドサービスを含む、安否確認システム

3、データ管理のサーバーやクラウドサービス、または、データバックアップシステム

4、制震・免震ラックや飛散防止フィルム、転倒防止装置などの地震対策

5、従業員用の非常食、水、簡易トイレ、毛布、浄水器などの備蓄品

6、土嚢や止水板などの水害対策用の物品

7、マスクや消毒液など、感染症を想定したもの

8、耐震診断

これらの「BCP実践ツール」のラインナップから、企業が取り組むべきことがみえてきます。

例えば2018年9月に、北海道で国内初のブラックアウトが発生しました(*5)。ブラックアウトとは、大手電力会社が管轄する地域(ここでは北海道電力が管轄する北海道全域)が、すべて停電する現象です。

*5:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html

ブラックアウトすると、どこからも電気を調達できない状態になります。企業活動は完全にストップします。

しかし、自動発電装置や蓄電池を用意しておけば、最低限の企業活動を継続することができます。まさに、BCP実践ツールです。

BCP助成金を使えば、上記の物品を購入したとき、その費用の一部を補填してもらえます。

まとめ~守ることで攻めることができる

レジリエンスの概念もBCPの考え方も、守りの一種です。そして多くの企業は、守りの施策をコストと感じる傾向にあります。それでレジリエンスもBCPも、企業に十分に浸透しているとはいえない状況にあります。

しかし、レジリエンスとBCPの取り組みは、危機に陥ったときに武器になります。他社が右往左往しているとき、すぐに復旧に向けて進むことができます。

 レジリエンス認証の審査は中小企業にとってはハードルが高く思われる部分もあります。事業継続に係る教育・訓練一つにしても実施実績などエビデンスを求められます。

 但しそういった企業を国が応援しており、助成金も準備されています。

【参考】ロードマップ事例のダウンロードはこちら

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