中小企業の革新的事業計画づくりを支援「補助金」がすごい
中小企業庁と中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が打ち出した「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金【ビジネスモデル構築型】」が話題になっています。
長い名称ですが、ポイントは「ビジネスモデル構築型」である点です。似た補助金に「一般型」がありますが、それとは別の補助金メニューです。
この「ビジネスモデル構築型補助金」は、中小企業の革新的な事業計画づくりを支援するサービスが対象になります。
つまり、中小企業を支える企業を支援する補助金といえます。
そしてこの補助金が注目を集めているもう1つの理由が、補助の手厚さです。
補助上限は1億円で、補助率は10/10と、かなりインパクトがあります。
全体予算は3,600億円「採択数は設定しない」
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金【ビジネスモデル構築型】」(以下、ビジネスモデル構築型補助金)の内容を紹介する前に、「政府の本気度」を解説します。
このビジネスモデル構築型補助金は、政府の2019年度補正予算のなかの「中小企業生産性革命事業」の事業メニューの1つです。予算額は3,600億円で、政府のこの事業にかける意気込みが伝わってきます(*1)。
さらに、中小機構は、ビジネスモデル構築型補助金の「採択数を設定していない」と述べています。つまり、補助金の趣旨にマッチする申請であれば、予算の限り給付するということです。
中小企業の事業計画づくりをサポートするサービスを提供している企業は、ぜひ前向きに検討してみてください。
補助内容
ビジネスモデル構築型補助金の内容を解説します。
本章では、以下の4点について紹介します。
・誰が補助金を受給できるのか?
・何をすると補助金を受給できるのか?
・補助金はいくらなのか?
・どの経費が対象になるのか?
誰が補助金を受給できるのか
ビジネスモデル構築型補助金の対象は、事業計画をつくろうとする中小企業を支援する企業です。事業計画をつくる中小企業が対象ではないので注意してください。
そして、その事業計画は、普通の事業計画ではなく「革新的ビジネスモデルを含む事業計画」である必要があります。
高度な事業計画の策定をサポートできる企業でないと、この補助金を受給することはできません。
この補助金の対象になるには、さらに次の条件をクリアしなければなりません。
・中小企業の経営革新を持続的に支援できる
・法人格を持たない任意団体や地方公共団体や個人事業主は対象外
では「革新的ビジネスモデル」「高度な事業計画」「中小企業の経営革新の持続的な支援」とは、どのような内容なのでしょうか。
次に「何をすると」この補助金を受給できるのかを解説します。
何をすると補助金を受給できるのか「支援プログラムとは」
ビジネスモデル構築型補助金の対象法人が、例えば次のような「支援プログラム」に取り組むと、補助金を受給できます。
1)面的デジタル化支援
面的デジタル化支援では、デジタルトランスフォーメーション(DX)がポイントになります。DXの導入は、中小企業のバックオフィス(顧客と直接関わらない部門)業務の効率化に欠かせないものですが、中小企業が単独で実施するのは、資金面からも人材面からも困難になることが珍しくありません。
そこで、面的デジタル化を支援するサービスが補助金の対象になるわけです。
2)デザインキャンプ
多くの中小企業が苦手とする業務に、デザイン性の向上があります。大企業であればデザイナーを抱えることができますが、中小企業では簡単ではありません。
そこで、中小企業とデザイナーの協働を支援するプログラム「デザインキャンプ」が必要になります。
3)ロボット導入の実現可能性調査(フィジビリティスタディ、FS)
ロボットや3Dプリンタなどの導入は、中小企業の技術革新に有効ですが、資金力に乏しい企業では簡単に導入することはできません。そこで中小企業は、自社にマッチしたロボットや3Dプリンタを厳選するために、実現可能性調査(FS)を行います。
このFSを支援する業務にも、補助金が出ます。
4)海外展開の実現可能性調査(フィジビリティスタディ、FS)
中小企業も海外に打って出る必要がありますが、単独で海外の市場ニーズを把握することは容易ではありません。そこで海外展開のFSを実施する中小企業を支援する業務も、補助金の対象になります。
この4つの支援プログラムは一例にすぎません。中小企業が革新的ビジネスモデルを構築するときに、それをしっかりサポートできる支援プログラムを実施すれば、補助金の対象になります。
中小機構は、支援プログラムの内容をチェックするとき、1)革新性、2)拡張性、3)持続性、4)政策的意義、の4点を重視する、としています。
そして、ビジネスモデル構築型補助金を受給するには、「30者(社)以上」の中小企業に、支援プログラムを提供する必要があります。
補助金はいくらなのか、支給要件は
ビジネスモデル構築型補助金の上限額は1億円で、下限は100万円です。
補助率は10/10なので、1億円の範囲内で、対象となる経費の全額が支給されます。
補助金が支給される要件は次のとおりです。
・事業期間:補助金の支給決定日から10カ月以内
・中小企業30者(社)以上に、3~5年の事業計画を策定する「支援プログラム」を開発して提供する
・支援プログラムの内容は、補助事業が終了してから1年で、支援先の中小企業の80%以上が事業計画を実行できるものでなければならない
・付加価値額:年3%以上
・給与支給総額:年1.5%以上
・事業場内最低賃金:地域別最低賃金+30円以上
かなりハードルが高い内容になっています。
どの経費が対象になるのか
このビジネスモデル構築型補助金では、11種類の経費を認めています。
つまり次の11種類の経費を使った場合、補助金として返ってきます。
1:補助金事業に従事するスタッフの給与や賃金
2:補助金事業で使う機械装置や情報システムの経費
3:補助金事業で必要になる旅費(交通費、宿泊費、日当)や、専門家に支払う旅費
4:外部の専門家に依頼したときの謝礼などの経費
5:補助事業で必要になる会議、講演会、シンポジウムで使う会場費や機材費などの経費
6:消耗品費
7:広報費
8:運搬費
9:補助金事業で使うクラウドサービスの利用費
10:特許、意匠、商標などの知的財産権の取得にかかる経費
11:外注費
支援プログラムの開発と提供に必要な経費はほぼ網羅されている印象があります。
申請方法と審査方法とスケジュール
ビジネスモデル構築型補助金の「申請方法と審査方法とスケジュール」について紹介します。
申請方法:4ステップで簡単
ビジネスモデル構築型補助金の申請は4ステップで進みます。
支援プログラムの事業計画の資料をつくってしまえば、申請自体はとても簡単です。
<ステップ1>
以下のURLの電子申請システム「jGrants」で、申請者の情報を入力します。
jGrants ネットで簡単!補助金申請 | jGrants
<ステップ2>
30者(社)以上の中小企業の支援プログラム事業計画を、「プレゼンテーション資料」と「プレゼンテーション動画」にして提出する
<ステップ3>
支出計画書を提出する
<ステップ4>
直近2年間の決算書を提出する
審査方法:4項目をチェック
ビジネスモデル構築型補助金を受給できるかどうかは、支援プログラム事業計画の「プレゼンテーション資料」と「プレゼンテーション動画」の内容にかかっているといっても過言ではありません。
審査のポイントは次の4点です。
1:革新性はあるか:中小企業の生産性向上に寄与するか
2:拡張性はあるか:地域や業種の枠を超えて広がっていくか
3:持続性があるか:中小企業は収益化したり自立したりできるか
4:政策的意義にマッチしているか:技術開発や構造的な課題の解決に寄与できるか
スケジュール
ビジネスモデル構築型補助金の1次公募は2020年4月28日から始まり、公募締切は6月12日です。6月中に審査を行い、7月上旬に採択を発表します。7月中旬から事業を開始します。
1次公募は間もなく締め切りですが、2020年秋頃に2次公募が予定されていますので、検討される方は是非本記事を参考にして、計画を策定してみてはいかがでしょうか。
かなりスピーディーなスケジュールなので注意してください。
まとめ~政府の本気度がうかがえる
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金【ビジネスモデル構築型】」は補助金額1億円という、大規模な事業です。補助率10/10や、採択数を設定しない方針にも、政府の本気度がうかがえます。
その代わり対象事業は、中小企業に革新性をもたらさなければなりません。さらに、中小企業が収益化、自立化できなければなりません。
かなり高度な支援が求められます。
*1: 令和元年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領〔ビジネスモデル構築型〕- ものづくり・商業・サービス補助金事務局
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記事監修
classwork編集部
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