令和2年度 賃金不支払残業の結果が公表されました
令和3年9月22日に、令和2年度の「監督指導による賃金不支払残業の是正結果」 が厚生労働省より発表されました。
令和2年度分の割増賃金の遡及支払状況(※一社で100万円以上支給した企業にかかるデータが対象)を見ていきましょう。
業種別の企業数
- 是正企業数 1,062 企業(前年度比 549 企業の減)
うち、1,000 万円以上の割増賃金を支払ったのは、112 企業です(同 49 企業の減)。

是正企業数が多い業種の上位3位は製造業、商業、保健衛生業です。
一方、農林業や通信業では是正企業が少ないことが読み取れます。
業種別の対象労働者数
- 対象労働者数 6万5,395 人(同 1万3,322 人の減)

対象労働者数が多い業種は製造業、保健衛生業、接客娯楽業が上位3位になっています。
是正企業数では7位であった接客娯楽業が、労働者の面では多いことが読み取れます。
一方、農林業や通信業はやはり少ないようです。
業種別の是正支払額
- 支払われた割増賃金合計額 69 億8,614 万円(同 28 億5,454 万円の減)

是正支払額は、製造業、教育・研究業、保健衛生業が上位3位となっています。
是正企業数と似た結果になっていますが、6位であった教育・研究業が2位になっています。
一方、農林業や通信業はやはり少ないようです。
支払われた割増賃金の平均額は、1 企業当たり658 万円、労働者1 人当たり11 万円になることが分かりました。
また、過去10年度分の100万円以上の割増賃金の遡及支払状況から、平成29年度から企業数、対象労働者数ともに年々減少していることが読み取れます。

労働基準監督署が監督指導を行ったことで、賃金不支払残業を解消した事例を4社ご紹介します。
【ケース1:その他の小売業】
〈賃金不支払残業の状況〉
- 出勤を記録せずに働いている者がおり、管理者(店長)も黙認している。
- 退勤の記録後も労働を行っている者がいることを監視カメラの映像から確認。
〈解消策〉
- 労働者の正確な労働時間についての実態調査を行い、不払となっていた割増賃金の支払いを行う。
- 労働基準監督官を講師として各店舗の管理者である店長を対象として研修会を実施。
- 店長以外の従業員に関しても法令遵守の教育を行う。
- 社内コンプライアンス組織の指導員を増員し、店舗の巡回と抜き打ち調査を行う。
これらによって、賃金不払残業を発生させないような風土づくりを図るとともに、勤怠記録との乖離がないかの確認を行った。
【ケース2:プラスチック製品製造業】
〈賃金不支払残業の状況〉
- 時間外労働が自発的学習とされており、割増賃金が支払われない。
- 勤怠記録と実労働時間に大きな乖離のある者、またその理由が「自発的学習」とされている者が散見された。
〈解消策〉
・勤怠記録と実労働時間との乖離の理由が自発的な学習であったのか、ヒアリング調査の実施、自発的な学習と認められないものについて不払となっていた割増賃金の支払いを行う。
- 代表取締役が管理職に対し、時間外労働の適正な取扱いについて説明。
- 労働組合との協議によって、同様の賃金不支払残業を発生させないよう取り組む。
このように、労使双方で協力して取組を行うこととした。
また、事業場の管理者による職場巡視を行うことで、勤怠記録と実労働時間に乖離がないようにチェックする体制を構築した。
【ケース3:パルプ製造業】
〈賃金不支払残業の状況〉
- 自己申告制が適正に運用されておらず、賃金不支払残業が発生している。
- 非生産部門に関して、申告された時間外労働時間数の集計、割増賃金の支払いが一切行われていない。
〈解消策〉
- 非生産部門の労働者について、申告が行われていた記録を基に時間外労働時間数の集計と、不払となっていた割増賃金の支払いを行う。
- 勤怠システムによる労働時間管理とともに、時間外労働を行う際には残業申請書の提出を義務付け、残業申請書と勤怠記録に乖離があった場合には調査を行う。
- 労務管理担当の役員から管理者および労働者に対して、労働時間管理を改善する旨の説明。
これによって、時間外労働の把握をすることの重要性を周知した。
【ケース4:その他の小売業】
〈賃金不払残業の状況〉
・退勤処理を行った後で働いている者がいる。
・聞き取り調査を実施、退勤処理後に労働をすることや、出勤処理を行わず休日出勤をすることがあると判明。
〈解消策〉
- ヒアリングやアンケート等の実態調査によって全社的に退勤処理後の労働があること、出勤処理を行わず休日出勤を行っていることが判明。不払となっていた割増賃金の支払いを行う。
- 代表取締役による賃金不支払残業解消に関するメッセージの発信、社内のイントラネットに掲載。
- 実態調査を行い、人員不足や業務過多の店舗に対する人員の確保や本社からの応援を行う。
これらによって、会社全体に賃金不支払残業の解消を周知するとともに、店舗の業務が過度に長くならないように措置を講じた。
このような事例を参考に、労働記録や実態等を見直してみてはいかがでしょうか。
関連記事
記事監修
classwork編集部
クラスワークは、人事、労務のお役立ち情報を楽しく、わかりやすく提供するメディアです。「知りたかった事のズバリ」をお届けします。