アフターコロナ採用に 中小企業の勤務間インターバル制度導入のすすめ
なかなか終息のめどが立たない新型コロナウイルス。一方で、アフターコロナを見据えた事業計画、採用計画を立てる企業も出始めています。経済活動が本格的に再開した際により良い人材を確保するためには、求人の条件が重要です。特に中小企業は人材確保に苦慮する面も多く、柔軟性をもった働き方ができることは一つの武器になります。
今回は中小企業で導入検討をお勧めしたい勤務間インターバル制度についてご紹介します。
勤務間インターバルとは
「勤務間インターバル」は、勤務終了後、一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することが事業主の努力義務として規定されました(2019年4月1日施行)。 ※厚労省HPより抜粋
例えばA社の始業が8時だったとします。その日は急ぎの仕事で深夜0時まで残業、しかし翌日も眠い目を擦りながら8時には出社……。通勤や身支度に掛ける時間を考慮すると、自分の趣味の時間はおろか睡眠時間も足りませんよね。
もし会社が10時間の勤務間インターバルを導入している場合、深夜0時に退勤してから10時間は休息時間を取るため、翌日は10時出社となります。その間に英気を養うことで、常に頭の冴えた状態で健康的に働けるということを目的としています。
残業の抑制とは何が違うの?
わざわざ勤務間インターバルを導入せずとも、残業を〇時までと決めてしまえばよいのでは?と思う方もいらっしゃるでしょう。残業可能な時間の規定と勤務間インターバルには共通点と相違点があります。
まず共通点としては、どちらも「長時間労働を避ける」「ワーク・ライフ・バランスの充実」のための枠組みであるということ。
一方で、相違点は、残業できる時間を規定することで実現させるか、休息時間を規定することで実現させるかということです。
残業できる時間を規定する場合、規定時刻になるとシステムをシャットダウンさせたり、ビルの電気を消して退勤を促したりするような方法が考えられます。しかし、間に合わず早朝出勤をしたり、前述した通り翌日以降の働きに影響が出てしまったりすることも。その点、勤務間インターバルは休息時間を基準に考えるため、出社時刻を調整することでより柔軟に対応できるのです。いずれにしても導入に当たっては、残業を減らすべく業務の効率化を考えていく必要があります。
中小企業が導入するメリットと参考事例
もともと勤務間インターバルは、大手企業の裁量労働者向けの時間抑制策として始まりました。
例えば1日10時間のインターバルを例にとって考えると、拘束時間は14時間です(24−10=14時間)。休憩を1時間とすると、残業は5時間(14−8−1=5時間)。
21日勤務では残業105時間にのぼります。
ここまで残業する中小企業は少なく、裏を返せば、ほとんどの中小企業にとっては勤務間インターバル制度の導入の壁は低いと考えられます。
努力義務でルールの縛りも少ないため、導入の自由度が高いこともメリットです。厚労省の導入事例を見ると、導入している業種は製造・小売・医療福祉・情報通信業など多岐にわたります。始業時間を変えられない・お客様ありきの労働時間であるような企業でも、導入されている事例があります。自分の会社では難しいと諦める前にご一読ください。
例えば、パッケージソフト開発を手掛ける「株式会社スナップショット(従業員数20名)」では、全社員を対象に11時間の勤務間インターバルを導入しています。就業規則の改定のみ行い、申請手続きや上長への承認などは設けず運用は本人に任せる形です。
もともと繁忙期に特定の社員に偏って時間外労働・深夜労働が発生していたこと、勤怠管理ソフトを扱う会社だったことで労働環境の改善にも意欲的であり、導入を決定。導入の効果として、時間外労働が30%減少しました。また、読書や業界リサーチなど自分の時間をとれるようになったことに加え、出社の定時を見越して深夜までの残業を控えるなど、業務効率も向上したと感じられるようになりました。
また中途採用で入社した社員からは、入社を検討する際に勤務間インターバル制度は目新しく、魅力的に感じたとの声もあり、制度導入自体が会社の価値を高めているようです。
また、銀行業を営む「株式会社東邦銀行(従業員数2,167名)」では、フレックスタイム制を補完する形で11時間の勤務間インターバルを導入しました。2014年上半期と2017年上半期の時間外・休日労働時間を比較すると、52%減となったことが分かっています。余暇時間を自己啓発や勉強に活用する従業員も増え、この多様性を尊重した働き方は就活生へのアピールポイントとなっています。志願動機の一つとして、両立支援制度や多様な働き方の充実度を上げる方が多く、人材確保にも大きな効果があるように感じられると評判です。
多くの求人情報がある中、「勤務間インターバル制度」という名前があるだけで、多くの求職者の目に留まるのではないでしょうか。中小企業こそ積極的に導入し、求人情報を出す際には社員を重んじる企業である旨をアピールしていくとよいでしょう。
勤務間インターバルの助成内容
導入に際しては、外部講師を招く・環境を整える等の必要経費を一部助成する制度があります。
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
概要は以下の通りです。2020年度の申請期限は11月30日(月)必着です。
事業実施期間中(交付決定の日から2021年1月29日(金)まで)に取組を実施してください。
本助成金でいう「勤務間インターバル」とは、休息時間数を問わず、就業規則等において「終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているもの」を指します。なお、就業規則等において、○時以降の残業を禁止し、かつ○時以前の始業を禁止する旨の定めや、所定外労働を行わない旨の定めがある等により、終業から次の始業までの休息時間が確保される場合においては、当該労働者について勤務間インターバルを導入しているものとします。一方で、○時以降の残業を禁止、○時以前の始業を禁止とするなどの定めのみの場合には、勤務間インターバルを導入していないものとします。
〇支給対象となる事業主
(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
ア 勤務間インターバルを導入していない事業場
イ 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
(3)全ての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
(4)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

〇支給対象となる取り組み
(1)労務管理担当者に対する研修
(2)労働者に対する研修、周知・啓発
(3)外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
(4)就業規則・労使協定等の作成・変更
(5)人材確保に向けた取組
(6)労務管理用ソフトウェアの導入・更新
(7)労務管理用機器の導入・更新
(8)デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
(9)テレワーク用通信機器の導入・更新
(10)労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
※研修には、業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
〇支給額
取組の実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給します。
対象経費の合計額に補助率3/4(※)を乗じた額を助成します(ただし次の表の上限額を超える場合は、上限額とします)。
(※)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で6から10を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

賃金額の引上げを成果目標に加えた場合の加算額は、指定した労働者の賃金引上げ数の合計に応じて、次の表のとおり、上記上限額に加算します。なお、引き上げ人数は30人を上限とします。

出典:厚労省 “働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
まとめ
多くの中小企業にとって、勤務間インターバルの導入はハードルが低い一方で、求人活動に際して強いPRとなり得ます。コロナ禍においてはテレワークが推進され、多くの企業で働き方の改革が進められました。柔軟な働き方が推奨される今こそ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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記事監修
classwork編集部
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